恋にお寿司に音楽に

棺桶には寿司とCDと愛を入れてください

"俺達"

 

十代のフラストレーションとセンチメンタルを両肩にガッツリ乗せたままボーッとよそ見して歩いてたらいつの間にか俺は29歳になっていた。

 

あの頃思い描いてた29歳にはなってないし俺のことだからなっててほしくもないだろう。

 

そして今日も相も変わらず浮かない顔して性懲りもなくロックを聴いている。

 

いつ聴いても青春のあのメロディはあの時のままここにいる。

 

学校の隅、通学中のチャリンコ

実家の部屋、電車の中

職場の休憩室、深夜バスの中

大好きだったあの娘のとなり。

再生ボタンを押せばいつでも、どこへだっていける。

 

そしてあの頃の俺と今の俺がイヤホンをはんぶんっこしてロックを聴いている。

どっちの俺も、変わらずくらーい顔してなんとなくお互いに気を使い合っている。

俺は俺にさえ心を開けない。

仕方ない、そういう馬鹿はロックでも聴かなきゃやってられねぇのさ。

 

 

…これから何百、何千、何万と音楽を聴くのだろう。

その度に俺は音楽に、そしていつかの俺に支えられて生きていくのだろう。

 

 

あぁあ僕は僕はいつまでたってもドキドキしてたいんだ。

ドキドキしてたいんだよ。

 

まだ大丈夫。まだまだ青春は続くよ。

目の前の三十路という急カーブを前に二十代最後の"心臓やぶりの坂"を自分のペースでかけのぼる。

 

まぁほどほどに頑張ろうな。

 

俺の中の俺達。